棟上げ式

A house-raising


サビアンにおける3度は、1度のそのサインの凝縮された表現に対して、2度の1度に対するリアクションが起こり、ここで、陰陽の反作用が起こり、世界観が構築されます。1度で放たれたそのサインのエッセンスが、2度で受け取られ、着地し、形骸化します。1度の男性性と2度の女性性が統合されて生まれ出るものが3度であり、子供なのです。3度は、サビアンの創造的な表現、活力があり、原初的な活動力です。
蠍座1度の観光バスでは、見ず知らずのもの同士が、同じバスに乗り合わせ旅に出かけます。狭いバスの中で、日々の生活を共にすることで、相手と深く関わり合っていくことになります。密封され、逃れることのできない観光バスの旅路は、相手が嫌だからといってバスを降りることはできません。旅を続けるためには相手を理解し、深く関わり合う必要があります。こうして、2度では、自分を美しく固めていた香水瓶が割れて、中の臭気がぶちまけられます。
瓶から飛び散った、自分自身の生身の中身を見せ合って、関わる世界が蠍座の関係です。美しい香水瓶のまま、相手の想像におまかせします的な人間関係は、天秤座的な関りであり、本当の意味ですべての自分をさらけ出すことはありません。
どこかで適切な距離を置き、相手の好きなように自分を想像させる余地を与えているからこそ、互いにうまく関係性を保つことが出来る。それが、天秤座的な、上手な人間関係の在り方です。
しかし、蠍座の世界ではそれは通用しません。観光バスに、距離を置くという選択肢など許されませんし、自分のすべてをさらけ出さなければ、旅を続けることは不可能だからです。
どんなに仲の良い友達でも、恋人同士でも、一緒に暮らし始めると、相手の嫌なところや、生活習慣、全てが見えますから、1~2か月もすると、いったん、相手を大嫌いになることだって起こると思うのです。
その時に、関係性を解除するか、この後も共に暮らすことを努力するのかの選択に迫られるのだと思います。
昔は、親子代々に渡り、同じ家に住み、親の家を子供が継ぎ、そのまた子供が家を継ぐ、という、親子3世代、4世代が同居しているという家庭が普通でした。これは、なみなみならぬ観光バス的な世界観であり、互いに譲り合い、深い感情を交わし合わなければ実現しない生活だと思います。
今は、みんなそれが出来なくなっていて、お金で解決できてしまう部分が多くなったので、子供は自立したら自分の家を持ち、親と離れて暮らす、という家庭が多くなりました。親と同居、嫁が夫の家に入る、など、ほとんどなくなった時代です。
このようにある程度、距離を置いていれば互いにうまくいくのだけれども、逆説的には、「距離を置いた関係性」しか築けなくなっているということもあると思います。
いざ、相手と、はらわた見せ合って、関わり合わなければいけない局面になったときにどうしたらいいのか、分からないというのが現代人の特徴かもしれません。
結婚しない人が増えているというのも、親と同居しない人が増えているというのも、蠍座的な人間関係を築くことは、究極的な感情体験を要することでもありますから、あえてリスクを避けようという人も、増えてきているのだと思います。

蠍座2度では、このように、互いのすべてをさらけ出し合って、臭い部分も、汚い部分もはらわた全部見せるくらいの深い関りあいをしていこうとしている場面でした。
こうして、3度では、こうして深く結びついた相手とともに、生きていく、人生を構築していこうとしている場面が描かれているのだと思います。
人生を共に作り上げる。
これは、2度で示されたような、自分のすべてをさらけ出して、深く結びついた相手とでないとできることではありませんよね。
例えば、結婚という儀式も、これにあたるのではないでしょうか。一応、相手と一生共にすることを誓い、それは、共に生活すること、子供を産み育てること、家を買い、人生設計を共にして、互いに支え合ってそれをしていく。
これは、適切な距離を置いた他人とではできることではありませんよね。
蠍座3度は、棟上げ式、というキーワードになっています。家を建てるときに、家の基礎工事が終わり、一番最後に屋根の一番高い場所に、棟木と取り付けることをいい、この時に、大工さんへの感謝と、これからの家の繁栄を祈って、お祝いをするというのが昔からのしきたりだそうです。棟上げの日は、たくさんの大工さんの手が必要となるため、この度数では、一つの目標に向かい、信頼できる仲間とともに協力し合って進めるなどの意味合いがこのサビアンにはあります。
また、家、という人生の最も大切な買い物を、その建築過程を祝うというのは、夫婦でこれからこの家を、家族を守っていくという、覚悟の祝祭でもあるのだと思います。

家を買う、建てるという行為は、それだけ、覚悟のいるもので、誰かとともに、その家を守っていくというのは、まさに蠍座的な、関係性によるものだと思います。