環状の道
Circular paths.
サビアンにおける15度は、サインの前半のストーリーの、総まとめ編の度数になります。
この度数をもって、1度から15度までの前半の物語が、完結します。
サビアンの前半の物語とは、陰陽でいうと陽のエネルギーの物語で、
そのサインの、片側の性質だけがシンプルに表れやすくなります。
反対側の性質を知らないからこそ、勢いよく、サインの性質を推し進めることができるのが、1~15度までの前半の物語です。
天秤座の前半の物語は、この世界(相手)と、関りながら、この世界の中で、自らの意思を反映させ、形にしていくという行程を体験するのでした。
世界との関りがあって、初めて、私たちは自らの意思を現実にすることができます。
それは、相手との関りであり、肉体との関りであり、自分対世界との関りにはあらゆるものがあります。
そして、天秤座は、風のサインですから、こうした世界とのやりとりを、知性によって、成熟させ、スキルとして、成長させていこうとします。
世界とよりよく関わり、自らの意思を世界の中で反映させる方法を、知識としてスキルとして、育てていこうとしたのが、11~15度までの3番目のグループのテーマでした。
天秤座の、全体のテーマは、相手(世界)との関りの中で、自分を位置づけ、
他者の目に映る自分を通して、社会の中で、自らの存在を位置付けていこうとするのですが、天秤座は受動的なだけのサインではありません。
世界と積極的に関り、やり取りをしながら、自らの意図を反映させていくというテーマを持ちます。
ここまでの天秤座の流れを振り返ってみましょう。
12度で鉱山の地中深く潜り、意識の深層まで、危険を冒してでも深く対峙していった過程がありました。
これは、世界とよりよく関わるための、知恵の鉱脈を得るための挑戦だったのだと思います。
それは非常にストイックな態度で、リスクと危険があるのが分かっていてもあえて、それを取りに行きたい強い想いが感じられます。
そして、13度のシャボン玉の度数では、あらゆるアイデアが出るまでになりました。
12度で深く、潜在意識に潜り、対峙したことで、少しずつ、潜在意識の力を使えるようになり、創造性が発揮されてきます。
しかし13度ではまだ、この力を効率的に、管理し、使うことはできていませんから、アイデアが次から次へと出てきては、シャボン玉のように浮かんでは消えてしまう脈略のない状態も見えています。
こうした頭の表層の部分から出てくるアイデアは、その時は、すごいものに思えるのですが、なかなか後に続かない、そこから突っ込んでいくまでにならない、ということも多いものなのだと思います。
そして、14度では、ふと、昼間から眠りに落ちるようになります。
寝ても寝ても眠い、とか、白昼夢を見てるような日々が続くといったような状態になります。
私たちは、眠っているとき、アストラル体を旅していますから、眠りの最中にアクセスした意識を、起きているときにも使えることが本来の理想なのです。
能動的に、知恵の鉱脈を取りに行こうと躍起になっていたときは、得られなかったものが、14度では、家でただ、昼間から眠りに落ちている間に、それが得られてしまうというようなことが起こっている度数です。
私たちは、能動と休息、活動と静止、など、規則的なリズムを繰り返すことによって本来の、リズムを取り戻していきます。
私たちの社会では、陰陽の陽のエネルギーばかりが良しとされて、動くこと、活動すること、プラスすること、足し算することばかりが重要視されがちなのですが、
実際には、陽のエネルギーが増した分だけ、陰のエネルギーも必要になるのだと思います。
サビアンでは、能動宮の15度はすべて、共通してこうしたことが述べられています。
反対側の度数の、
牡羊座15度では、毛布を編むインディアン、となっていて、もっとも行動的であるはずの牡羊座のマックステンションの15度では、ひと編み、ひと編み、丁寧に、時間軸に沿って、編んでいくことでしか、毛布(大きな目標)は達成することはできないし、それが一番、遠回りのようで、近道である、というようなことを言っています。
能動宮ですから、15度ともなれば、振り切れるほどのテンションで、活発に行動して掴みに行くのか、みたいなイメージが浮かびますが、実際はそうではありません。
サビアンの示すところでは、14度で、いったん、非常に受動的で陰的な在り方に、
入ってそのあとに、受動的なスタンスのまま、一番欲しいものを得ている、というような物語が描かれています。
天秤座14度では、正午の昼寝で、眠りたいだけ眠り、体が欲するがままに休息した結果、
15度では、環状の道、という風になっています。
環状の道、とは、ぐるぐると回りながら、上昇していく道を示します。
まっすぐ進むのではなく、行ったり来たり行きつ戻りつしながら、先へ進むイメージです。
天秤座は、自分の意志だけで突き進むサインではありませんから、
世界とのやり取りを繰り返しながら、能動宮ですので、先へ進みます。
それは、まさに、環状の道のように、行ったり来たり、ぐるぐると螺旋を描くように、上昇し進んでいくイメージなのではないでしょうか。
自分以外に誰も存在せず、世界とのやり取りも何もなければ、行きつ戻りつ環状道路のような進み方にはなりようがありません。
肉体も持たず、意識しかなければ、思ったらすぐに、思い描いたものが、手に入るかもしれません。
しかし、世界とのやり取りを必要とする私たちの世界では、天秤座の学びが必要になるのです。
それは、世界とのやり取りの仕方であり、関わり方であり、世界のニーズをくみ取りながら、行きつ戻りつしながら、受動的な態度で、果敢に前へ進む。
それが、とても天秤座らしい在り方だと感じます。
物事を先へ進めたければ、遠回りなようでも、これが一番近道なのではないでしょうか。
世界からのニーズを一切聞かず、例えば肉体の声を聴かず、周りの人のニーズを無視して、社会のルールや決まり事をすべて無視しては、おそらく、先に進むどころか、早々に破綻してしまうでしょう。
だから、世界からのあらゆるニーズを聞きながら、前進するということは、環状の道を歩むような、まどろっこしさや、進んでるのかどうか分からないようなもどかしさもあるかもしれませんが、でもやっぱり、それが一番、先へ進む効率的な方法なのだと感じます。
天秤座の、前半の物語が完結する15度のこの度数は、もっとも天秤座らしいテンションが高まる度数でもあります。
環状の道、とは、まさに、天秤座らしさを、言いえて妙、なキーワードだと感じます。