一人の男の話を聴くために山から降りてきた群衆

Crowds coming down the mountain to listen to one man.

サビアンにおける24度は、5度区分ずつのグループ分けにおける第5グループですが、この度数は、9度ずつのグループ分けにおいては、3グループの6にあたります。

3という、創造性の土台の上にある、6ですから、

6のバランスをとる調和する性質と、15の外側に向けて強い求心力を発していく性質とが合わさりますので、

自ら発した求心力を、自分で受け止めて調和させていこうとするのが、

24度の性質になります。

ですから、サビアンにおける24度は、自分で求めて、自分でその求めたものを受け止めて調和させるために、どこまでも深堀していく、といったようなエネルギーになります。

また、23度までで成熟して実りを迎えたそのサインの、一番おいしい果実を、24度では、五感のすべてで、味わい尽くしているような場面です。

23度で、実りを迎え、24度で、一番おいしいところを食べて味わっているといったような感じですね。

蠍座23度では、妖精に変容した兎、という度数で、それまでの荒々しい本能的な性質や、強い反抗心を、23度では最も洗練された形での表現に昇華させることが出来たため、多くの人に受け入れられ、マイノリティが、マジョリティに、勝つ唯一の方法が試された場面でした。

マイノリティは、マジョリティに勝つことはできませんが、

マジョリティが、狂人を天才と認めれば、マイノリティは、マジョリティに勝利することが出来ます。

時代を先駆けるのは、常に、マイノリティであり、狂人であり、変人なのです。

こうして、天才となったかつての狂人は、それまでは、つまはじきにされ、

魔女狩りの対象にされ、村八分にされていたところから、

民衆たちの人気者になり、大先生扱いされるようになっていきます。

蠍座24度では、一人の男の話を聴くために山から降りてきた群衆となっています。

例えば、精神性や魂の資質に目覚め始めた人が、街を捨てて、山に入るというような話はよく聞きますよね。

山の上にいる仙人とか、グルに会いに山に入るという経路です。

しかし、この度数は、逆になっていて、山にいる人たちが、一人の男の話を聴くために山から降りてくるのです。

これは、どういうことなのでしょうか。

山にいる人たちというのは、先ほどもいったように、仙人とか、グルとか、

社会から逸脱して、町にいられなくなった人たちなどではないでしょうか。

よく、普通の社会生活が営めなくなって、自給自足をするために山に住み始める人や、森で暮らし始める人がいますよね。

また、マジョリティの常識ばかりが押し付けられる社会生活がどうにも

肌に合わなくて生きづらくて、引きこもりになる人、会社勤めや学校をやめてしまう人たちというのもいます。

彼らは、外に出たくても出ることが出来ない、人とコミュニケーションをすることが出来ない、そういう人たちがこの社会にはたくさんいます。

そして、彼らは、マイノリティなのです。

そして、社会のどこか、決定的におかしなところに気づいている人たちでもあるのではないでしょうか。

こうして、「山ごもり」している人たちが、一人の男の話を聴くために、

山からぞろぞろと下りてくるのです。

それは、山籠もりしている、マイノリティの彼らとおなじようなかつての、狂人と言われた人が、今は、天才となって、社会の中心で、マジョリティたちを感動させ、彼らを動かすまでになっているのですから。

それは、かつての蠍座前半で、表現されたような、支配や、あらゆる手練手管による、コントロールではありません。

ただ、彼らは、この天才の、綴る文章や、描く物語や、色彩や、ダンスや、舞台に、熱狂し、感動し、涙し、心を奪われ、生きる糧にまでしているのです。

多くの人たちは、決してコントロールされてるわけでも強制的に支配されてるわけでもなく、自分で恋い焦がれて、この人に熱狂し、この人がなければ生きられないほど、心の支えにしているのです。

その、天才とは、かつては、山籠もりしている彼らと同じような、世間からつまはじきにされた変人だったのです・・

こうなると、山籠もりしている彼らも、山にこもってる場合ではなくなり、

いざ、この天才に一目会いに行きたい、自分たちの生きづらさも、

彼の話を聴くことで、生きる道が開かれるかもしれない。

狂人が、この世で、自分らしく生きる方法を知ることが出来るかもしれない。

変人でも、人に感動を与え、社会のために何かできる人になれるかもしれない、そう思うと、山を下りずにいられない・・

この度数は、

そういう物語なのではないかと、思うのです。

蠍座のテーマとは、人を深く知り、人の心を深く学び、そして、対象と誰よりも深くつながることが出来る人間力の育成です。

人の心を知り、人の心を動かし、人の心を深くつながることで、

私たちは、自分を深く知ることが出来るのでしょう。

そのために、人の心を動かすために、最初は、いろいろなやり方をしてきました。

でも、この度数に来て、最も人を動かし、感動させることが出来るのは、

まずは、自分の信念を貫き、たった一人孤独になっても、おかしいものはおかしいと認識し、それ以外のものを棄て去る勇気であり、

自分を生きようとする覚悟から始まるのではないでしょうか。

自分というたった一人に立ち返って初めて、その自分の中に在る

濃い深い想いを、他者に伝えるには、どんな優しいやり方があるのか、

楽しいやり方があるのかを、考えることが出来るようになる。

蠍座の深い学びがここにあるのです。